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漫画『死刑執行中 脱獄進行中』に見るオマージュとパクリの違い

最近舞台が公開されたらしいが、漫画版の話。
荒木飛呂彦の短編集、『死刑執行中 脱獄進行中』をKindle版で読んだ。

個人的にはジョジョのスタンドバトルよりも、短編で描かれるサスペンスとかホラーっぽい作品が好きだ。

この本に収録されている4作の短編の中では、やはり表題の『死刑執行中〜』がアイデアもオチも最高だった。

ただ、Amazonのレビューを見ると、ヤン・シュヴァンクマイエルという人の『部屋』という短編の映像作品そのまんまらしい。気になったので、『部屋』も見てみた。

オマージュとパクリの違い

「主人公は部屋(マンガだと監獄)に閉じ込められ、そこに仕掛けられた様々な罠に苦しめられる」というアイデアは確かにそのまんまだ。

「スープを飲もうとしたら、スプーンに穴が空いていて飲めない」というシーンなんかは完全に一致。

しかし「パクリなのか?」というと何か違う気がする。
『死刑執行中〜』は舞台が監獄、仕掛けられた罠は「処刑」(ひき肉ミンチマシーンとか電流)であり、そこから脱獄するという明確なストーリーがある。


一方、『部屋』では仕掛けは嫌がらせみたいなものであり(色んな風刺とかメッセージが込められていると思うが)、理不尽な目に遭う男をコミカルに描いていると感じた。結末も見せ方としては全然違う。

オマージュとパクリの違いをググると、以下のページがよくまとまっていたので紹介。
  • オマージュ:元作品への尊敬や賛辞があること。元作品の改変であることを明らかにすること(ただし明らかにしない場合もある)。
  • パクリ:既存の作品の盗用。第三者や元作品の作者が指摘する。
 巻末の作者あとがきでは、
「死刑と脱獄を同時にさせるというアイデアから思いついた、ひたすらサスペンスを描くために描いたサスペンス」と、自分が思いついたアイデアのように解説している。

上記の整理だけで考えれば、「元作品の改変であること」は明らかにするつもりはなさそうだし、パクリに近いように思える。

まあ「この作品の元ネタはこれです」なんて作者が紹介できるわけがないので、ここにツッコミを入れるのは野暮かもしれない。
 
前述の「スプーンに穴が空いている」とか、あえて元ネタから丸々持ってくることで、「わかる人にはわかるようにしてますよ」と考えればオマージュだと捉えることもできる。 

結論

パクリなのかオマージュなのか、考えれば考えるほど違いがわからなくなってくる。作者と元作品の作者、どちらが影響力があるかで変わってくる部分もあると思う。

 
シンプルだけど最終的にいちばんスッキリしたのは以下のページ。

1kando.com

・バレて困るのがパクリ
・バレると嬉しいのがオマージュ
・バレないと困るのがパロディ

 
『死刑執行中〜』の場合、バレてもバレなくても困らない。バレても「シュヴァンクマイエルいいよね。設定とオチをアレンジしてサスペンスにしてみたよ」と説明すれば終わる。


結論としては、『死刑執行中〜』はシュヴァンクマイエル『部屋』をオマージュした作品、と考えていいんじゃないだろうか。