漫画『死刑執行中 脱獄進行中』に見るオマージュとパクリの違い
最近舞台が公開されたらしいが、漫画版の話。
荒木飛呂彦の短編集、『死刑執行中 脱獄進行中』をKindle版で読んだ。
死刑執行中脱獄進行中 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/11/01
- メディア: Kindle版
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個人的にはジョジョのスタンドバトルよりも、短編で描かれるサスペンスとかホラーっぽい作品が好きだ。
この本に収録されている4作の短編の中では、やはり表題の『死刑執行中〜』がアイデアもオチも最高だった。
ただ、Amazonのレビューを見ると、ヤン・シュヴァンクマイエルという人の『部屋』という短編の映像作品そのまんまらしい。気になったので、『部屋』も見てみた。
オマージュとパクリの違い
「主人公は部屋(マンガだと監獄)に閉じ込められ、そこに仕掛けられた様々な罠に苦しめられる」というアイデアは確かにそのまんまだ。
「スープを飲もうとしたら、スプーンに穴が空いていて飲めない」というシーンなんかは完全に一致。
しかし「パクリなのか?」というと何か違う気がする。
『死刑執行中〜』は舞台が監獄、仕掛けられた罠は「処刑」(ひき肉ミンチマシーンとか電流)であり、そこから脱獄するという明確なストーリーがある。
一方、『部屋』では仕掛けは嫌がらせみたいなものであり(色んな風刺とかメッセージが込められていると思うが)、理不尽な目に遭う男をコミカルに描いていると感じた。結末も見せ方としては全然違う。
オマージュとパクリの違いをググると、以下のページがよくまとまっていたので紹介。
- オマージュ:元作品への尊敬や賛辞があること。元作品の改変であることを明らかにすること(ただし明らかにしない場合もある)。
- パクリ:既存の作品の盗用。第三者や元作品の作者が指摘する。
巻末の作者あとがきでは、
「死刑と脱獄を同時にさせるというアイデアから思いついた、ひたすらサスペンスを描くために描いたサスペンス」と、自分が思いついたアイデアのように解説している。
上記の整理だけで考えれば、「元作品の改変であること」は明らかにするつもりはなさそうだし、パクリに近いように思える。
まあ「この作品の元ネタはこれです」なんて作者が紹介できるわけがないので、ここにツッコミを入れるのは野暮かもしれない。
上記の整理だけで考えれば、「元作品の改変であること」は明らかにするつもりはなさそうだし、パクリに近いように思える。
まあ「この作品の元ネタはこれです」なんて作者が紹介できるわけがないので、ここにツッコミを入れるのは野暮かもしれない。
前述の「スプーンに穴が空いている」とか、あえて元ネタから丸々持ってくることで、「わかる人にはわかるようにしてますよ」と考えればオマージュだと捉えることもできる。
結論
パクリなのかオマージュなのか、考えれば考えるほど違いがわからなくなってくる。作者と元作品の作者、どちらが影響力があるかで変わってくる部分もあると思う。
シンプルだけど最終的にいちばんスッキリしたのは以下のページ。
・バレて困るのがパクリ
・バレると嬉しいのがオマージュ
・バレないと困るのがパロディ
『死刑執行中〜』の場合、バレてもバレなくても困らない。バレても「シュヴァンクマイエルいいよね。設定とオチをアレンジしてサスペンスにしてみたよ」と説明すれば終わる。
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